2011年11月1日火曜日

ITインフラ業界はクラウドによってどう変わるのか?


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以前のエントリー(ITインフラ業界に再び訪れる破壊的イノベーションの波)を書いて、

「ITインフラのクラウドなんて仮想化の延長じゃん。破壊的イノベーションなんて起きないしwww」

みたいな意見をいただいたので、自分なりにもう少しクラウドによってもたらされるであろう業界の変化を整理してみます。

結論をまず書くと、クラウドはITインフラをいずれアプリケーションの一部にしてしまう、これがITインフラ業界に起こる変化だと考えています。

以下、ITインフラがアプリケーションになった世界では何が起こるか考えてみました。


インフラSEの仕事はAPIが代わりに行う

低レイヤーな部分は隠蔽され、利用者はAPIを経由してインフラを操作し、好きなときに好きなだけのリソースを使えばいい、という時代になります。

・仮想マシン(という概念が残っているかわからないけれど)の作成・変更・削除
・ストレージ領域確保・拡張・解放
・リソースの配置(ロケーション)制御
・データのバックアップ、リストア
・ネットワーク接続
・可用性管理

等々の今までITインフラのSEによって設計・構築されたものは全てはAPIへと集約されるでしょう。

真面目を真面目に考えてみた

真面目をつきつめると、自分より真面目な奴に席を譲るしかなくなるのだ。米国の真面目はインドの真面目に。日本の真面目は中国の真面目に。そして全人類の真面目は、機械の真面目に。

俺が言いたい事をdankogaiが全部言ってくれている。

以前、飛行機パイロットの話を書いた事があるが、ブログのコメントだか何かに今のパイロットはものすごく大変な訓練を経て難しい試験に通っている旨を延々と書いてあるものがあった。

それは確かに大変な苦労だったかもしれないが、時代とは残酷なものである。発展途上国の空軍出身のパイロットがグローバル化に伴いパイロットの賃金低下を招き、さらにオートパイロット化が追い打ちをかける。

まさにこの現象が起きると考えています。



ハードウェアはより高性能&安価に、ソフトウェアはより便利&無償に

ハードウェアはコモディティ化し差別化要素が無くなり、これまでは高価なハードウェアで実現されていた機能が全てソフトに置き換わってしまうでしょう。

ハードウェアを購入(すら必要無いかもしれない)したらラックに搭載し、ネットワークにつなげて電源ONすればクラスタの一部に自動的に組み込まれる。そうしたら後はAPIを経由して好きなように利用するだけです。

2,3年後にそうなってるとは思いませんが、早ければ10年後に、遅くとも20年後にはほぼ実現されているでしょう。

Amazon、Googleといったクラウド最先端&最大手が率先してこの流れを牽引している上、OpenStackに代表されるオープンソースで開発されるIaaSプラットフォームソフトウェアがそれを追いかけ、加速度的にソフトウェアは進歩しています。しかもこれらの成果物は無償で利用可能です。

HWメーカーは苦しくなるでしょう。なぜならどこから買ってもほぼ同等の物が手に入るのでサーバーやストレージ、ネットワーク機器は今のパソコンと同じ薄利多売の世界になるでしょう。HDD業界がシュリンクされほぼSeagate、HGST、WesternDigitalしか残っていないように業界の淘汰が進むはずです。

メーカーは自分のハードウェアを買って貰うために、こういったクラウドAPIを備えたソフトウェアを自社のハードにバンドルして付加価値を出してくるかもしれません。

こうなるとメーカーから物を仕入れてボックスムーブビジネスを行っている会社も存在価値が薄れていくでしょう。

電気屋に行くとWindowsがバンドルされたノートPCが5万円で買えますが、そのうちVMwareがバンドルされたサーバがネット通販で5万円も出せば買える時代になっているかもしれません。



淘汰される旧型ITインフラエンジニア

これまでの仕事がAPIに取って代わられると、当然ながら旧来の仕事しかできないエンジニアは淘汰されていき、クラウド時代のITインフラエンジニアとしての役目が求められてきます。

これまでのITインフラの世界はバッドノウハウにどっぷりつかっていて、XXXのストレージの特性は~、YYYのスイッチは~、ZZZのバックアップソフトは~、といった他人が作った「物」の使い方を覚える事が主でした。

ではこれからはクラウドのAPIを覚えて活用していくのが大多数のエンジニアの仕事になる・・・とは残念ながらなりません。

クラウドを利用、管理する業務はRightScaleに代表される、クラウドラッパー系(グッドラッパー)のツールがより進化することでほぼ自動化されてしまうからです。

そうなってくるとインフラ領域で生き残れるのは、低レイヤーの処理を理解し新しいクラウドサービスとAPIを創れるようなコアなエンジニアのみになってしまうでしょう。

こういった大部分のインフラエンジニアが避けてきたプログラム領域が次のITインフラエンジニアの主戦場となるでしょう。しかもこの分野はワールドワイドでの戦いになるでしょう。


しかし今やっていることがゼロになるかと言ったらそういう訳でもありません。ホストは未だに使われていますし、ベクトル型スーパーコンピューターも未だにニーズはあります。こういったニッチ領域でLinuxをインストールして、クラスタを構築して、バックアップを設定して、と生き残るのも有りです。

後は購入したサーバをラックマウントし綺麗に配線する配線職人もいいかもしれません。



最後に

クラウドの本質はこの「ITインフラのアプリケーション化」であり、これまでのITインフラ業界を大きく変えていく、というのが個人的な考えです。

以前行ったITインフラ/基盤エンジニア アンケート2011では楽観的な意見が多かったですが、残念ながらそうはならないのでは、と予想しています。

第百五十三回国会における小泉内閣総理大臣所信表明演説

「この世に生き残る生き物は、最も力の強いものか。そうではない。最も頭のいいものか。そうでもない。それは、変化に対応できる生き物だ」

今まさにITインフラ業界は大きな変化が起きる一歩手前にいるのだと考えています。

1 件のコメント:

Tsuyoshi Otake さんのコメント...

非常に興味深い文章ですね。色々と考えさせられました。

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