2011年10月22日土曜日

ITインフラ業界に再び訪れる破壊的イノベーションの波


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ここ30年で劇的な変化を遂げてきたIT業界。その業界構造の変化と今後の行く末を考えてみました。

コレは生まれて初めて行ったジムの筋トレがきつすぎて、別のことで気を紛らわそうと考えていたことです。

何をいまさら・・・感のある内容です。


ITインフラ業界に起こってきたこと

ITインフラに起こった破壊的イノベーションの代表的なものとしてSunSGIの例があります。かつてはUNIXサーバ・ワークステーション、グラフィックの領域で一世を風靡しましたが、コンシューマー領域から発展したIAマシンが劇的な進歩を遂げることで市場の本流から押し出されてしまい、業績の悪化に伴い両社は買収という結末を迎えました。

SGIを買収したのが、BTOで安価に大量のサーバを生産することで成長してきたRackable Systemsというのが破壊的イノベーションを象徴するような出来事だったと感じます。

こういったITインフラ業界の推移を自分なりにまとめたものが下図になります。




破壊的イノベーション(Disruptive Innovation)

破壊的イノベーションとはイノベーター理論の中で語られた1つのモデルです。ITインフラ業界はこの破壊的イノベーションが繰り返し起こることで今日の状況に至っています。



簡単に説明すると、

1つの技術が顧客のニーズを満たし普及していく。その技術は時間経過と共に持続的な進歩を続けていき、やがて顧客の要望を超えた水準に達する。

その時、かつては注目されていなかった新技術や後続技術、また別領域で使われていた技術が時間と共に進歩を遂げた結果、既存顧客のニーズを満たす水準に達している。

それに気付いた顧客が新技術にシフトすることで業界構造や商流が大きく変化する(破壊される)



となります。

ホストはUNIXへ、UNIXはIAへ、そしてIAは仮想化されてしまい、今後仮想化はクラウドへとシフトしていくこの流れの事です。



今後のクラウド

現在クラウドはアーリーアダプタ層による取り組みが主となっています。場所や物を意識しないという概念はメリットもある反面デメリットもあるためレイトマジョリティが様子を探っている段階だからです。

これは技術的な問題より「ここにデータを置いても大丈夫か?」という法的や心情的な問題が障壁となっているためです。

そのためクラウドへの移行のクッションとしてこれまでの仮想化を「プライベートクラウド」と名前を変えて販売するのか現在の主流です。

しかし今後、リーガルチェックAPIや要求機能のチェックAPI、OpenFlowと連携したネットワーク経路の自動変更、これらを包括して管理するための統合管理・自動化ツールが登場してくることで、パブリック・プライベート・オンプレミスな環境を自在に切り替えて使うクラウド時代が来るのではないかと考えています。

OracleやHPのような、オンプレミス市場で大きな勢力を持つ会社がクラウドに参入し始めているのはその兆しだと考えられます。



エンジニアはどうなるのか?

ホストはシステムジェネレーションができれば一人前(らしい)、UNIXはクラスタが構築できれば一人前、IAは仮想化できれば一人前、のように主流技術の変化に伴いエンジニア求められるスキルも変わってきました。

これまでのようなオンプレミス環境を作る技術、すなわち他社の製品を買ってきて・組み合わせて・設定していくようなタイプのエンジニアは市場の縮小に伴い、相対的に価値が下がってしまうと考えています。

このタイプの技術はプライベートクラウドまでは通用しますが、大規模に展開することを想定するパブリッククラウドとは極めて相性が悪いです。これは他社製品の組合せで構築された環境は規模の拡大に応じて、ハードウェア・ライセンスが比例して増加するため規模のメリットが出にくいからです。

クラウドはコンピュータ産業における、根源的な2大要素「計算する」「データを保存する」へのITインフラエンジニアの関わり方を大きく変えます。これまでエンジニアはこの2大要素に対して「高速に計算する環境を作る」、「安全にデータを保存するための仕組みを作る」といった付加価値を付ける事がこれまでのミッションでした。しかしクラウドが主流となってくるとこのミッションの大半が既にクラウド提供元によって実装されてしまいます。

そのため今後はコアな技術を持ってクラウドの基盤を作れる一部のインフラエンジニアと、クラウドとクラウドをAPIを通じて連携させて制御するようなC2C(Cloud to Cloud)エンジニアが活躍するようになっていくと思います。

これまでの技術しか持たず、そこ方一歩踏み出せない人は容赦なくアドミニストレーターやオペレーターへと立場を変えざるを得ない状況になってしまう可能性がありますので注意が必要です。

*既存市場が完全に無くなることはありません。が、縮小していくことはほぼ確実となります。


その次にくるものは

何となく思っているのが、クラウドが拡張していく流れで自然とグリッドのような方向に行くのでは無いかと考えています。

仮想化によりHWを意識しなくなり、クラウドにより場所や物を意識しなくなり、グリッドによりどこのリソースを使っているのかも意識しなくなる。

一定のお金を払えばみんなが持ち寄り共有化されたリソースから課金した分だけのリソースが使えるようになる、そんな時代になるのではないかと考えています。



まとめ

ITインフラ業界は破壊的イノベーションを繰り返してきた。

今、クラウドにより再度業界の再編が起ころうとしている。

これまでのオンプレミス向けの技術は相対的に価値が下がる。

これからはクラウドそのものを構築するコアなスキル、APIを使ったC2Cスキルが重要。

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